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    ロバート・ペッカネン「日本における市民社会の二重構造」を読んで、自治会を市民団体として積極的に位置づける必要があると思った



    アメリカの政治学者による日本の市民社会の分析。2006年刊行で日本では2008年発行。公益法人改革の関連法が2006年なので、そのことは反映されていない。

    著者の言いたいことは、「日本の市民社会は地域に密着した多数の小規模団体(自治会含む)により形成され、専門職化した大規模団体はほんの一握りで二重構造になっている」ことと、そのため、「政策提言機能が弱い」という2点。

    日本の制度を他国の人に紹介しているため、おさらい部分が多いが、こういう見方もあるのね、と所々新鮮。

    1章は序章。論点などが書かれている。アメリカの退職者協会(AARP)は会員3500万人、職員1800人、150人の政策・立法スタッフがいるそうで、これと日本の老人会を比較して、政策提案してないでしょう、と言っている。う〜ん、ちょっと強引。ただ、日本にはAARP的な組織がないのは事実。

    2章は日本の市民社会の現状。自治会を含む市民団体への加入率は72%でアメリカ(61%)より高いことと、「4つの小ささ」、すなわち会員数、専門職員数、予算額、活動範囲が小さいことが特徴だとのこと。例えば、環境団体で比べると、日本でもっとも会員数が多い「日本野鳥の会」が5万人超に対し、ドイツでは500万人、アメリカで400万人とケタ2つ違っている。なお、自治会を市民団体に含むことについて著者はいろいろ考察していて、結果、含んでよし、と考えているようだ。

    3章は法規制を踏まえた市民団体の現状。公益法人改革前の法人制度の説明と法人数など。

    4章は自治会についての分析。著者には自治会がユニークな存在に見えたようだ。で、その実態をつかもうと既存調査のデータやインタビューなどを駆使しているが、なかなか難しいようだ。まあ、日本で自治会と関わる仕事を長年してきた私にとっても地域によっていろいろ違うので全体像はわからないのだからしょうがない。

    行政組織との関係については、行政協力活動を行なっていること、行政が団体が独占的に地域を代表するものとしてその正当性を認めていることなど、適切に把握していると思う。また、「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)として機能してる」という指摘は確かにそのとおり。

    5章は公益法人をめぐる法律について。NPO法の設立にいたるまでの経過が詳しく書かれている。

    6章はまとめ。まず、1896年に民法34条が公布されてからNPO法に至るまで100年ぐらい不変であったこと、特に1960〜70年代の反対運動が公益法人の高いハードル(主務官庁制や資金)の影響もあって形を結ばず、市民活動の氷河期があったこと、ただし、政策提言する団体にはならなかったが、生協などの生活者運動につながった、としている。

    これが、阪神淡路大震災後の法律制定の動きがあったときに、多政党であったことなどでNPO法ができ、これを皮切りに公益法人制度が急激に変化している、と書かれている。

    最後に、政策提言するような組織が少ないことにより多元主義的ではないが分極されておらず、AARPのような組織はないが自治会等により高齢者を取り巻く社会関係資本は維持されており、アメリカ型ではない市民社会がある、と結んでいる。

    この本で面白かったのは、市民社会における自治会の位置づけ。一般的な市民団体とは分けて考えがちだが、著者のように積極的に市民団体として位置づけて市民社会やローカルガバナンスを考えていく時期に来ているのではないかと思った。


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    後房雄「 NPOは公共サービスを担えるか」を読んで、包括的事業委託はよさそうだけどアドボカシー機能があるか調べてみたいと思った



    以前に読んだ田中弥生さんの「市民社会政策論」(2011)で取り上げられていた本。2009年発行。

    本書は、 NPOが公共サービスを担うべきという立場から、また、イギリスのボランタリー団体経営者協会をモデルとした日本サードセクター経営者協会(JACEVO)を推進する立場から書かれている。

    これまでの論文を再編集している本で、3部構成であるが部としての構成はあまり明確でない。

    1章ではグローバルな公共経営革命とアソシエーション革命が起こっているという指摘。また「民間企業主導の自由主義的改革」と「市民社会が存在感をもつ自由主義的改革」が競いあっているとも指摘している。

    2章ではアメリカのクリントン政権における「行政改革」の内容を紹介。「アントレプレヌール型行政」が提起されたそうである。また、日本の志木市の地方自立計画や東海市のまちづくり指標も紹介されている。

    3章はアメリカにおける政府ーNPOの関係の変遷。面白かったのは1977年のアメリカの国勢調査によると正規職員が0の市町村が4,424あるということ。日本とは地方自治体のあり方がかなり違っている。またアメリカ連邦政府・政府間関係諮問委員会による、公共サービスの「決定」と「創出」を区別すべきだという考え方を紹介することを通して、著者の公共サービス提供者としてNPOの必要性を補強している。

    4章は日本における公共サービス改革について。日本の政府は量的には小さかったが、外郭団体や民間団体を「手足」として活用することで「大きな政府」としての役割を果たしてきたという指摘が面白かった。また、これまでは福祉の「措置制度」のように、政府が一方的に様々な決定を行う制度であったが、1997年以降、費用は公的に保障しながら、民間の多様な供給主体の競争と利用者の選択権を導入した「準市場」(バウチャー)のメカニズムを採用しているということも面白かった。介護保険などで知ってはいたが、あ〜、バウチャーと同じなんだと改めて気付かされた。

    また、準市場や指定管理者制度、市場化テストなどによりNPOが公共サービスを担うチャンスが大きく開かれたが、分野ごとに準市場などのシステムがバラバラであり、それに対し、NPO側がまとまって意見をいう体制がとれていないことが問題だと述べている。

    5章は委託について。NPOが委託を受ける場合、「NPOの自律性と政策のアカウンタビリティーのバランス」が核心問題だとしている。またNPOにとっての事業委託の利益と不利益についてのガッチやスミス&リブスキーの分析や、自律性維持のための戦略としてレカートが上げていることを紹介している。さらに、日本のNPOへの調査結果や、多治見市の補助事業、愛知県の委託事業、神奈川県の協働事業負担金、大阪府のNPOからの企画提案型事業を紹介している。

    6章は、NPOはもっぱらボランティアと民間寄付に依拠するべきという「ボランタリズムの神話」の批判。具体的には田中弥生さんの「NPOが自立する日ー行政の下請け化に未来はない」という本を批判。また、理念的協働についても批判している。そして「包括的事業委託」という実施過程においてはNPOに裁量権を与え、行政は事業の成果を監視し、報酬を成果に連動させる方式が望まれるとしている。また、フルコストリカバリーが重要だとしている。

    田中さんと後さんの話は、細かくみれば批判すべき内容なのかもしれないが、私としては寄付・会費中心のNPOも公共サービス提供中心のNPOも存在していいと思うので、批判しあってもな〜、という感じだった。

    終章では、イギリスのコンパクトを詳しく紹介しつつ、コンパクトのような政府とNPOセクターの「合意型文書」をつくるには、NPOを組織化しないといけないので、日本サードセクター経営者協会(JACEVO)が必要なんだよ〜という話。これは同意するが、そのためにはNPOセクターが分裂しないようにしなきゃ。

    私は浦安市の市民参加推進会議のメンバーで、近々協働事業提案制度の評価をやるので、その点に注目して読んでいた。後さんは協働事業提案制度は過渡期的で、包括的事業委託が望ましいとしている。私は協働事業提案制度は、新規の施策を提案したり、既存の施策を改善するアドボカシー機能を内蔵させているのがキモだと思っているが、それが包括的事業委託でできるのかどうか。これについては書かれていなかったので、もう少し包括的事業委託イメージ(イギリスではやっている?)を調べてみたいと思った。

    三好皓一ほか「評価論を学ぶ人のために」を読んで、迷走せず、学習につながる評価に取り組みたいと思った



    引き続き上野真城子さん関連。2008年1月発行なので既に5年前の本になる。1部と2部に分かれていて1部が「評価の概念と方法」2部が「分野別評価の現状と課題」となっている。執筆者は国際開発に関係する人が多く、国内の政策評価をもとに考えると、ややズレている感じがした。

    1章は編著者による「評価とは何か」。評価の定義として「種々の政策、施策、事業の実施と効果を組織的に査定するもの」と記されている。また評価の目的は、「学習」と「説明責任」と書かれていて、「学習」というのが新鮮だった。さらによい評価のためには①有用性点、②公平性と中立性、③信頼性、④利害関係者の参加度などを満たされければならないと書かれていた。まぁ、1章はおさらいですね。

    2章は「量的評価」、3章は「質的評価」について書かれている。量的評価について書かれているように「得られた結果がどの程度信頼できるか、その結果から何が言えるか」が問題だと思った。まさにガベージ・イン、ガベージ・アウトである。質的評価については人々のエンパワメントの評価方法が載っていた。12の指標を設けて、それが達成されたを見るものだ。日本で考えた場合、適切な指標もあったが、そぐわないものもあった。

    4章が上野さん達による「パフォーマンス・メジャーメント」である。ハリー・ハトリーの本の最後にあった長い解説文がそのまま入っていた。ちょっと残念。

    5章は、費用便益分析について。代替法、旅行費用法、へドニック価格法、仮想評価法(CVM)の4つの概要紹介や費用効果分析との比較など。

    6章は参加型評価について。「事実はある価値体系の中で解釈されて意味を持つようになるのであり、客観的なひとつの事実が最初から存在するわけではない」と言う「構成主義(constructivism)」の立場からきている評価方法。参加型評価に限らず「評価」というのはそういう側面があると思う。参加型評価をこれから導入すべきと言う形で書かれているが、日本の実態としてはすでにある程度、参加型評価がなされていると思う。

    7章からは2部で、7章は中央省庁の政策評価について。行政評価法から策定された背景から平成19年度までについて書かれている。とにかく評価が始まったということを評価しつつ、今後の課題として、評価が予算に反映されないことや、評価の説明方法、省庁での評価方法の統一等が書かれていた。8章は自治体がやってる評価について。現状示しつつ具体的な改善策について書いてあった。「評価は必要以上に精度を要求しない」と言うのは新鮮な意見だった。

    9章は田中弥生さんによるNGOのアカウンタビリティについて。NGOが資金源に向けたアカウンタビリティを重視する傾向にあるが、地元へのアカウンタビリティを行う必要がある、しかし、地元が賛成・反対にわれている時、誰が、どう、何を評価すればいいのかということが問われるし、未解決であると書かれていた。

    10章は学校の評価について。ある学校評価総括表というのが示されていて「友達を呼び捨てにさせない」「思いやりのある行動を発表させる」などの指標があった。迷走しているな〜 11章は大学評価で、これも迷走していると感じた。

    12章は保健福祉評価について。現在、科学的根拠に基づく医療の評価と、サービスの質の評価の2つが同時に関心を持たれているそうだ。前者は日本ではまだあまり取り組まれてないそうで、今後これをシステム化していくことが重要だと書かれていた。

    13章は環境評価。経済的評価手法として直接評価と間接評価があり、それぞれ数種類の手法がある。また技術的評価として環境アセスメントがある。さらに歴史や文化への影響を図る社会的評価手法というのもあるそうだ。現在は技術的評価が中心だが、経済的・社会的評価も今後やっていく必要があると書かれていた。

    14章はジェンダー評価、 15章は開発援助評価で、いずれも海外の文献の概要紹介という感じだった。開発成果と援助の関係性について「帰属(厳密な因果関係の立証)」ではなく「貢献(因果関係の可能性の高さ)」に基づき評価しようとをしているという記述は、面白かった。

    行政からの委託を主な仕事としている身としては、評価の必要性や重要性はわかるが、迷走しないように、そして学習につながるように、取り組まなければいけないなあと思った。

    ハリー・ハトリー「政策評価入門」を読んで、日本の政策評価の現状・全体像はどうなっているか知りたいと思った



    前回に引き続き、上野真城子さん関連。アーバンインスティチュートのハトリーさんの本を上野さんたちが翻訳したもの。アメリカでは1999年に、日本では2004年に出版。

    政策評価というタイトルだが、原題はPerformance Measurementで、主にパフォーマンス(業績)の測定について書かれている。

    政策評価を主とした業務はやってなく、委員で指定管理の業務評価をやっているぐらいなので、日本においてどういう方式が主流なのか、最先端なのかという全体像はよくわかっていない。総務省の政策評価ポータルサイトを参考にしているぐらい。

    で、本書は5部構成で、1部は概説。1章では業績測定の定義などで、「サービスあるいはプログラム(施策)のアウトカム(成果)や効率を定期的に測定すること」としている。2章は業績測定の要素を定義している。ハトリーさん方式は、中間アウトカムと最終アウトカムの2つを用いることが特徴的。

    2部は業績測定のプロセスで、3章では、まずワーキンググループをつくることと、そしてどう作業するかが具体的に書かれている。4章では施策の目標と顧客を明確にすべしということ、5章ではアウトカムの作り方が書かれている。

    で、例えば「高校中退を防止する」という施策の中で、「父母講習会」を行った場合、アウトプットは「講習会の開催」で、中間アウトカムは「講習会への参加や修了、子どもに学校に行くことを勧めること」で、最終アウトカムは「子どもが学校に行くようになり、中退者が減ること、さらに長期的には経済的に向上すること」という具体例が示されている。

    う〜ん、中間アウトカムと最終アウトカム、わかった気もするが、峻別が難しそう。

    6章は測定する指標について。先ほどの「父母講習会」を例に指標が書かれている。「中退者数と割合」など、わかりやすいものもあるが、わかりにくいものもある。

    7章はデータ収集の方法。この中で郵便アンケートでも50%の回答をめざすべき、そして回答率を上げるために、カラー紙に印刷したり、2〜3回、郵送を繰り返すべきと書かれていたのが興味深かった。私の経験では郵送で50%はなかなかシンドイ。しかし、郵送を繰り返すことはしていない(督促ハガキを出すことはたまにある)ので、そういう方法もやってみるべきかな、と思った。

    3部は分析と利用方法。8章は地域別比較など、比較のカテゴリーについて。9章はベンチマーク=達成目標値について、10章は分析のやり方や報告書の作り方について、11章は報告書をどう使うか−例えばアカウンタビリティ(説明責任)や予算要求など−、12章は予算編成での使い方が書かれていた。

    11章の中に、行政職員の業績と給与を結びつけるという見出しがあって、実際にやっているのかと思って読んでみると、「それは難しい」という結論だった。まあ、アメリカでも難しいだろうなあ。一方、成果を出した場合、委託費を増すという契約はあるようで、これは興味深かった。日本でもあるかもしれない。

    4部はその他の論点で、13章が業績測定の質を保つ方法、14章は業績測定費用をどう減少させるか等のその他の課題、15章は全体の要約となっている。

    13章のチェサピーク湾の水質向上や、米国幹線道路交通安全局の死亡者数や事故件数を減少させる例はわかりやすかった。

    印象的だったのは、業績測定の数値がひとり歩きしないように端折ってはいけない、数値を絶対視してはいけないと繰り返し書かれていたこと。アメリカでもひとり歩きしてしまうんだろうなあ。

    読みながら、日本の政策評価の現状・全体像はどうなっているかモヤモヤしたので、上野さんに聞いてみたいと思った。

    ボリス他「NPOと政府」を読んで、多様性と共通基盤のバランスを考え続けることが大事だと思った



    上野真城子さんにお会いするので関連本を読もうと思って。また、「市民政策」の原稿の参考にもなるので。

    本書は上野さんが勤めていたアーバンインスティチュートが中心になってまとめたもの。アメリカでは1999年に出版されている。それを上野さんと山内直人さんというNPO業界の重鎮が翻訳し2007年に出版。アメリカでは2006年に改訂版が出されたそうだが、それが反映されてないのが残念。

    1部である序章〜1章は概説。本書でのNPOは、内国歳入庁に登録されている非営利組織の内、慈善団体と社会福祉団体が中心とのこと。また、1章では政府とNPOの関係が、相補か、補完か、敵対かということを歴史的観点から見ている。結論としては3つの概念レンズを通して関係を見ることが必要、とのことだった。

    2部である2〜5章は資金について。2章はNPOセクターの資金、3章は連邦予算におけるNPO予算の動向、4章は寄付控除や税免除、免税債などのNPOの税措置、5章は政府によるNPOへの資金供給。データが中心なのでそれが古いことが残念。

    例えば、CDC(コミュニティ開発機関)への連邦政府助成が1980年度に比べ97年度は1%減少したとのことだが、その後どうなったのかとか、CDCが住宅開発する上で重要なツールであるLIHTC(低所得者住宅税クレジット)が、サブプライムローン問題後、どうなっているのかとか、知りたいところ。

    3部である6〜9章は公共政策との関係。6章は地方分権がNPOにもたらす影響、7章は営利転換するNPOの事例やその意味について、8章は価値観について、9章はアドボカシーについて。

    そして4部は10章のみで、レスター・サラモンによる国際比較。たぶん以前、見たことがある。これもデータが古いのが残念。

    で、本書では8章が面白かった。法改正により宗教団体が社会福祉サービスの担い手になるチャリタブルチョイスという制度ができたことや、全米芸術基金への政府補助金の削減を例に、宗教や芸術という価値観に関することに対して、NPOがどのような存在意義を持つのか、また、それに資金支援する政府の位置づけが書かれている。

    例えば、社会問題に対し明確な立場をとり、政策策定者に圧力をかける「特殊利益団体」がNPOに占める割合が増えていること、それによりNPOは市民社会を形作る存在というより、分断するものと見なされつつあること、一方で、「中央集権+標準化」vs「地方分権+多様性」という図式の中で、これを調停する役割をNPOが持っていること、などが書かれている。

    多様性は大事だが、行き過ぎれば共通基盤がなくなり分断を招く、また、地域の多様性を偏重すれば、ナショナル・ミニマムが確保しづらくなる、その中で、NPOが、あるいは市民社会がどうバランスをとっていくか。時代に応じてみんなで考え続けることが大事だと思った。


    プロフィール

    ksatani

    Author:ksatani
    佐谷和江と申します。都市計画・まちづくりの仕事をしてます。
    http://www.kgk-net.co.jp/staff/satani.html
    satani(@)kgk-net.co.jp

    まち活動のブログも書いています。
    http://ksatani.cocolog-nifty.com/blog/

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